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タモリと上岡龍太郎<6>2人にとっての笑福亭鶴瓶

  • kajiwarazassi
  • 2015年7月27日
  • 読了時間: 4分


 タモリと上岡龍太郎がテレビで邂逅することがほとんどなかった。

その代わり、2人は笑福亭鶴瓶と長期間、それぞれ違う番組で共演をした。鶴瓶というとその飄々とした風貌から身の回りの話をおもしろおかしく話す「鶴瓶噺」という独特なジャンルを確立した芸人だ。オチまでが長いということでも知られている。

 タモリが鶴瓶と出会ったのは「笑っていいとも!」である。(最初の共演は「今夜は最高!」らしいが、ちゃんと話す間柄になったのは「笑っていいとも!」とのこと)笑福亭鶴瓶は、1987年に木曜レギュラーとして登場してから曜日を変動することなく、番組終了するまで28年間、出演し続けた。しかし、鶴瓶は「最後までこの番組で受けたことないねん」と語っていた。鶴瓶がオチのある話をしていたとき、タモリは途中で止めたことがある。鶴瓶が「なぜ、途中で止めるねん」と聞いた際、タモリは「セオリーでいかれるよりも、途中で止めた方が客にとって新鮮だし、そこに新しい笑いが生まれる」と答えたという。鶴瓶はこの番組で先輩からも後輩からもイジられっぱなしだった。

 上岡龍太郎と鶴瓶といえば「パぺポTV」である。1987年から1998年の11年もの間、深夜帯に週1で2人のフリートークだけで展開されるテレビ番組。いいともとは違い、収録放送だったが、ライブを感じられる番組だった。鶴瓶がいつもの鶴瓶噺を披露していくと、上岡は相槌を打ちつつ、突っ込みを入れながらオチへと導いていく。タモリのようにオチをかぶせることはない。鶴瓶噺を十二分に堪能できる上、上岡も知的なボケを披露していた。

 テレビ上でタモリは鶴瓶の話を途中で止めるが、プライベートでは仲がよく、一緒に旅行などにも行くらしい。一方、上岡は鶴瓶の話のオチまで聞くが、プライベートで会うことは全くなかったそうだ。

 鶴瓶の周りにはさまざまな笑い話が落ちている、以前のテレビ番組では「パぺポTV」、最近では「きらきらアフロ」。ライブでは「鶴瓶噺」でそれらのネタは披露されている。なぜ、ここまで話が尽きないのか。タモリも上岡もこれに関して、共通の答えを出している。「この人は人を引き寄せる体質がある。むしろ、自分から寄っていく」と評している。また、鶴瓶に比べて自身のことをタモリは「僕は人間が小っちゃいし、人間が好きじゃない。人見知りだ」と語り、上岡の場合は「なるべく、近づいてくるなと思う。事が起こらないよう、目を合わさないように行動する」と話している。

 タモリは「彼は落語を軸に持ちながらも、バラエティに出るときは落語のイディオムを持ち込まない。そこが僕にとってはやりやすい。『いいとも!』は僕と鶴瓶を含めた出演者全員が、生放送の新鮮さを本能的に意識している」と話し、上岡は「僕は猿回しの猿。ノックさんもそうだったが、自分が受けようということがなかった。猿が受けてくれることが僕の喜び」と語っていた。

 「いいとも!」は集団の番組で「パぺポ」は個と個の番組。番組の性質としては真逆ではあるが、仕事、もしくはテレビに対しての取り組み方は上岡とタモリは対極に位置しているような気がする。上岡はテレビと芸を一緒にするが、タモリはテレビと芸を分けている。その代わり、上岡とタモリは人間的には至極似ている。自分の世界を持っており、自分が出演している番組を見るのが大嫌い。基本的に皮肉屋である。ゴルフやマラソンを嫌っていたが、趣味にしてしまう。愛煙家だったが禁煙するなど、その見事な転向ぶりまでも似ている。

 冒頭、2人がテレビで邂逅することはなかったと述べたが、笑っていいとものテレフォンショッキングに私が把握しているだけで3回出演している。

 初めて上岡がテレフォンショッキングに出演した際、何かあったらすぐにでも大阪に帰ってやろうと思っていたという。当時、大阪のメディアで東京を貶める発言をしていた上岡。鼻息荒く東京に乗り込むも、プロデューサーだった横澤彪に丁重に迎えられ、タモリにも丁寧にあいさつされ、キレたくてもキレられず、肩透かしをくらったようだった。

 そのときのタモリは上岡にビビっていた。直接そう言っていた訳ではないが、誰が見てもわかるほどにビビっていた。もし、上岡がそういう態度をとっていなかったら。もし、上岡がタモリと仲がよくなっていたら。もし、間に笑福亭鶴瓶が取り持っていたら。今の芸能界はまた違ったものになっていたかもしれない。

参考文献:いろもん弐 2000.3.30、2000.4.6

SWITCH 2015.5 2009.7

上岡龍太郎話芸一代 著・戸田学

http://www.nicovideo.jp/watch/sm18175451

 
 
 

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