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めしや太治兵衛の赤魚の粕漬け定食 @渋谷

  • kajiwarazassi
  • 2015年6月29日
  • 読了時間: 3分

定食屋で喰らう

 私は週3回、渋谷の職場で仕事をしている。

 場所は並木橋。明治通りを恵比寿方面に進むと代官山方面に抜ける八幡通りとぶつかったあたりだ。太治兵衛という名の定食屋もこのあたりに位置する。

 雑居ビルの多いこの周辺は、ラーメンの激戦区となっており、「やすべえ」「すずらん」「山頭火」と老舗実力派店舗が軒を連ねる。ほかにも「俺のハンバーグ山本」や「牛かつもとむら」など行列必至のレストランや「富士そば」「やよい軒」といったチェーン店も並び、幅広い層を取り込んだ食のアミューズメントストリートと化している。

 さらに、この周辺はセンター街とは違い、オフィス街としての一面を持っており、昼の12時になると、スーツの男女が沸いて出てきて、食の狩りに出かけていく。太治兵衛もこの時間帯になると人が並ぶ。

太治兵衛

 一銭めし屋のような古めかしさをあえて演出している外装。ガラガラと音のする引き戸を開けて、中に入るとじゃんじゃかとBGMから三味線がかき鳴らされている音が耳に入る。いわば雰囲気もののオンパレードだ。和装のちゃらい男性店員が「いらっしゃいませ」と大声を張り上げて出迎える。げんなりしながら、メニューを拝見する。和食の和食たる定食メニューがペン習字で書かれている。注文するのは赤魚の粕漬け定食(900円)。出てくるまで楽しみに待つ。

 店内には1人で来ているお客さんしかいない。静かな店内で聞こえてくるのはバックヤードのちゃらい店員のおしゃべりとかきむしるように弾かれた三味線。多少、イラっとするが、気にせずに待つ。

 出てきた赤魚の粕漬け定食は非常にシンプルな品目の組み合わせ。表題の赤魚にはしそと大根おろしを添えて、小皿には沢庵。味噌汁はネギとわかめ。ボリューム重視の若者にとってはちと物足りない。しかし、先ごろ40歳になった私にとっては、割とちょうどいい量だ。

 とにかく赤魚の粕漬。香りといい、焼き加減といい、ちょうどいい。粕加減もいい。というか、粕漬ってたまに食べたくなる。これも年齢のせいか。そして、漬物もちょうどいいインパクト。粕、ご飯、漬。いい流れだ。ご飯もうまい。炊き加減と言い、甘さといい、そのへんの定食屋ではあまりみかけないいいご飯。米は山形産の“はえぬき”だそう。うまい。

 食を進めていくと、どうもご飯があまる。こういうとき、私はいつも生卵を注文する。しょうゆをたっぷりかけて、卵ごはんにする。でも、今日はしない。ご飯がうまいからだ。もう一度言う。ご飯がうまいからだ。

 私はご飯とみそ汁を交互に口にすることにした。ご飯を主軸としたワンポイントリリーフの味噌汁。ご飯の甘みをちょうどよく引き立てる。ご飯を食べ終えた後の抑えも味噌汁。味噌汁を登板させるが、一旦ライトに守備変更してからの味噌汁。高校野球ではよく見られる采配だが、割と功を奏す結果を残す。とにかく、味噌汁こそが和食の抑えの切り札なのである。

 満足してお会計。ちゃらい店員はレジを打つと、私が引き戸を開ける前に開けてくれる。「ありがとうございました」と一言。あら、思ったより、お優しいのね。

 ちょうど並木橋の信号が青になっている。私はかけ足で横断歩道を渡ることにした。

めしや 太治兵衛

住所:東京都渋谷区渋谷3-15-6 並木橋ビル 1F

TEL:070-1078-3564

営業時間:11:00~23:30

 
 
 

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