タモリと上岡龍太郎<1>2人の弔辞
- kajiwarazassi
- 2015年4月12日
- 読了時間: 3分
この2つの動画はそれぞれ2人のお笑い芸人が自身の師匠に捧げた弔辞である。
厳密に言えば、片方はすでにお笑い芸人ではないし、弔辞ではなく、献杯の挨拶。そして、どちらも捧げた相手は師匠のようで、師匠ではない。
タモリと上岡龍太郎。
前者は誰もが知っているBIG3の大物司会者。後者は漫画トリオで一世を風靡し、関西・名古屋を中心に活動した後、東京進出。2000年に早々と芸能界を引退した1人の芸人である。
2人を比較するには、この2つの動画は絶好の素材であるにもかかわらず、このようにうまくデフォルトをそろえられないのは、2人のひねくれた芸風からかもしれない。
ただ、これらの弔辞は戦後を代表する2人の芸人が精魂込めて命を削って作り上げた一世一代の舞台であることには間違いない。2人の故人は2人の芸能生活を決定づけた大恩人なのだ。実際にこの2つの弔辞は、2人の芸風が顕著に反映されている。
まず、タモリが赤塚不二夫に向けて送った弔辞から見ていく。タモリは赤塚が亡くなった感想を冒頭に挙げた後、2人が出会ったころからの思い出を振り返っていく。そして、その思い出から赤塚の性格やキャラクター、本質を導き出し、「わたしもあなたの数多くの作品のひとつです」という名言で締めくくる。
特徴は淡々とした口調。エピソードとエピソードをつなぐ接続詞のようなものがないまま、次々と話題を変えていく。また、当時この弔辞は白紙だったということでかなり話題になった。これはタモリによると、「マネジャーの名前がトガシだったから、ギャグで勧進帳をやった」と明かしている(=J-CASTニュース 2008/8/19)。ギャグなのだろうが、会場から笑いが挙がることはなかった。むしろ、全体的にもそうなのだが、その言葉の矛先は赤塚だけがわかってくれればいいというような印象を受ける。
対して、上岡は横山ノックのお別れ会での献杯の挨拶。献杯の挨拶ということもあってタモリとは違い、来場者に体を向け、来場者に向けた講談のようなトークを展開している。文字に起こすと散文詩のようで、耳触りのよいリズムを刻みながら小気味よく。“漫才師から参議院議員 大阪府知事から最後は被告人にまでなったノックさん”の部分では見事に大きな笑いを誘っている。
エピソードとエピソードの間は“ノックさん”と呼びかけることでブリッジをつくり、畳み込むように横山ノックの特徴を挙げ続ける。最後には言葉を詰まらせながら、礼を述べる。タモリと同様、カンニングペーパーは手元にないが、しっかりとした構成ができあがっており、むしろ、かなり練習をしてきたのではないかと思わせる見事な芸人らしい弔辞である。
普通にシレっと弔辞を読んでみせているようで、実はアドリブ芸を披露していたタモリ。芸人らしい芸を惜しげもなく見せる上岡。2人の話術は、似て非なるというか、非て似なるという言葉が最も当てはまるような気がする。
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